海岸線
午前三時の明け方だ。
闇夜で景が踊りだす

誰もが釣り人だっただろう。
誰もが竿を持っただろう。

あちらの魚がいいだとか
此方の魚がうまいとか
絶えず何かを探したろう。

誰もが釣り人だっただろう。
明け方 船に乗っただろう。

人生という名のマグロ漁船
今はただの一船員。
貴方の傍には誰か居て
私の傍にも誰か居て
私は笑っていただろう。
私は怒っていただろう。
私は泣いていただろう。
私は生きていただろう。
皆で何を釣っただろう。

誰もが釣り人だっただろう。
其処には犠牲が在っただろう。

釣りには餌が必要だ。
貴方は餌を捨てるだろう。
貴方は魚を釣るだろう
貴方は時間を捨てるだろう。
貴方は魚を釣るだろう。

誰もが釣り人だっただろう。
必ず戻ると云っただろう。

人生という名のマグロ漁船
今や誰もが傍に居ない
私の名前は「船長」に
やがて変っていくのだろう。

たった一人の船の中
私は独り 舵を取り
たった一人の船の上
私は独り 釣りをする。

私の その肉塊で
私の その魂魄で
私の その悔恨で
引き上げてみよ その何かを。

与えられた選択肢
選択するのは勝手だが
よくよく考え お行きなさい

貴方が掴んだもの以外
選ばれなかった道などは
その瞬間に消え去って
貴方の前から居なくなる。

誰もが釣り人だっただろう。
其処には何かが居ただろう。

誰かは釣り人だったのか。
此処には何かが在ったのか。

午前五時頃 市場には
釣った何かが並ぶだろう。

そうして誰かが食べるのだ。
そうして誰かが釣り行くのだ。

いつもの水面は静けさ湛え
行く者 来る者 見つめてゐる
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