蟲
 深紅に染まった 世界で遊ぶ。
 無邪気な僕と 誰かが 生きて居る。

 雑音さえも 斬新に思えたから、
 時を忘れて 時空に身を捧げる。


 蛍光色の電灯が 今夜もまた灯って居る。
 逝き急ぐ蟲達が 希望を求めて 泳ぐ。

 光景さえも 斬新に思えたらしく、
 傍に居た誰かは 光に身を捧げる。

 紫色の焔に染まった 蟲が 今 消えた。
 光に希望を向けて 希望と共に 消えた。


 一体、その光の先には 希望とやらがあるのか。
 追い求めた先に 希望とやらがあるのか。

 生きて居る世界が ずっと暗闇だったから
 どんな光も 希望に見えてしまったかな。

 僕は 相も変わらず 虚空を見上げて
 唯 希望の裏を 見ていた。


 絶望に塗れた底辺から 手を伸ばす蟲達に
 あの希望は どんな風に 微笑みかけるのだろうか。


 いつかの彼は笑って 希望を語ってくれた。
 いつかの彼は泣いて 絶望を諭してくれた。

 生きて居た世界が ずっと暗闇だったから
 目に映るもの全て 希望に見えてしまったんだ。

 未だ 宵闇の中 手探りで進み
 唯 人間らしく 生きてみた。


 手に入る希望は 贋作だ。
 可視の希望は 偽者だ。
 そして真実は残酷で、
 現実もまた冷徹で。

 未だ 宵闇の中 手探りで進む姿は
 唯 浮遊する 蟲に 見えた。
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