無数の花

 幼い子供が下校する。
 午後3時頃の田舎道で
 彼らは笑顔で
 道端に咲いた花を摘みとる。

 「貧乏草」だ、と
 誰かは言っていた。
 擦り付け合われる花弁が散っていた。
 遠ざかるその影の後ろには
 もう花は無かった。

 罵られて
 毟られようとも
 何一つ言葉をかけてやれないのか
 目を伏せて
 しゃがみ込んだ
 僕という名前の偽善者。

 「貧乏草」を取ってしまうことに
 躊躇いは無い。
 戸惑いも無い。

 人間が目の前で死ぬことには
 抵抗がある。
 苛立ちを覚える。

 幸福なんて
 人間だけのエゴさ
 誰もが皆
 既に知っている筈なのに。

 誰もが幸せになんて綺麗事。
 何かを犠牲にしなければ
 人は何一つ得られない。


 「花なんて直ぐに枯れてしまうんだろう。」
 そう云って、草花を取り尽した。
 そのクセ、
 地肌が見えた土地に対しては
 危惧を示唆するのは何故?


 矛盾した生き物が
 地に横たわる時、
 最後の景色には
 罵った筈の花で
 綺麗に飾られていた。 

©2005 Himajin. All Rights Reservd.

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