寂しいなんて言わないで それは反則の言葉 私を拘束する たった一言の束縛 淋しいなんて言わないで それは戒めの言葉 私をこの場に引き留める たった一言の懇願 大丈夫なんて言わないで それは突き放す言葉 私が関わることを拒絶する たった一言の決別 お願いなんて言わないで それは封ずる言葉 私の意志を無に返す たった一言の呪文
カラスのモチーフ 旗の色は真っ赤で どくどくと音を立てる ストローの固まり 煙と水が交じり合う 水色三角フラスコ 時計が産声を上げ ようやく目覚める人間達の 悲しそうな微笑み 切り取られた空の下 矢印が縦横無尽にかけている 流れに身を任せよう 聡明な彼の台詞 螺旋階段に終わりがない 落ちていく水音 境内から聞こえる 他人同士の絡み合い 静かに空が晴れて 傷を舐める猫が一匹 膿んできた左目を フォークかなんかで取り出すと 光の照射か 言葉の影が見えるんだ 隣にいた彼は 病院の大先輩で 首を振ってゆっくりと 近づいてくる 妙なレンズの眼鏡をかけて
橋をこえるとコンビナートが見える 昨年話題になった環境問題 釣人はまばらで 丸い山から煙がのぼる うすもやのかかった瀬戸内海は 青い屋根の建物で占拠され 唇の尖った色の白い女が笑っている 照り輝く海の光りは 油虫の背中に似ていて 行き交う人々はため息まじり 冬の日に白い遺恨をのこす ブーツがすり減っていて 肩にかかる重い電柱 脇目でちらりと見る女 相変わらず唇をとがらしている 各駅停車は腰に来る 老人たちが品定め 橋から飛んだイワシの群れ 年の瀬は大忙し 気が付けばのぼり電車 熱にうかされた頭を振る 車掌は猫なで声で 「網干行きは乗り換え」 風に揺れる車体 窓の外には 走り回った山並が映り トイレの中で三回吐いた 色の白い男が立っていて 「パソコンを知りませんか」 黒潮を呑込んだ 海女さんがカキをむさぼる 夕日が雪に隠れて 文庫本を窓から投げる 品川あたりでは 電車が追いかけっこ 相変わらず 下水が臭かった
急勾配の崖を掘る人 彼の彫るもの それは死の歴史 あらゆる細胞の 憧れる形 それこそが 石なのだ 隣の部屋の男が 発狂して死んだ 死因は 胃の拡張 食いすぎだな 逆のやつも危ない 彼は 夢に目がやられてる 隣の男の夢 空に投げた釣竿 エサには豚足を 二時間後 車掌の群れが 彼の足元に積まれていた 看護婦が再び飛んできた 10秒38 時計を投げたひげ先生 並んだ三角木馬 警察が辺りを 取り囲んでいた 真っ赤な灯かりには 「鎮魂祭」 僕はあくびを繰り返した
そこで膝をついてしまうのか 確かにもう充分頑張った でもまだ糸を切ることはないじゃないか 糸を切れば全ては終わる 苦しみから解かれ 背中には羽 ただここまでの軌跡は君の胸だけに留まる あと一歩だけ そう一歩だけ 踏み出せはしないのか その一歩で65億人中 1億人を追い抜かせ 夢は所詮夢 希望だなんてキレイゴト そう思っているうちは 空も飛べない ましてや そこにはたどりつかない 別にいいさ充分やった 後悔さえ残らなきゃいい それこそキレイゴトなんだろ 執念であと一歩進めよ あと一歩だけ もう一歩だけ 進めりゃ景色が変わる そうすりゃ更にもう一歩進めるかもね ならもう一歩 またもう一歩 進めばいつか届くかもね その糸の先に続く何かへ 叶うんじゃない叶えるんだ そう自分で もう一歩だけ・・・ あとは自分だけ・・・
あなたに向けるのひとつだけの心 寝ても覚めても揺れて それだけで 好きってことだけで あなたなんか忘れてしまいそう あなたに向けるのひとつだけの心なのに
どうにもならなくって 私の希望の光というやつは 既に糸のような筋でしかない 掴めば、それは途切れてしまうのでは 恐れて手も伸ばせない 蛇口を捻れば 器にそれは溜まるのか もっと浴びれるほど溢れやしないか いや、溢れてくれ 溢れるほどの希望が欲しい その"希望"というやつは形を成していなくて 私自身 今何を求めているのかよくわからないが もし、その形のないものが生っている木があるのなら 誰か その場所を教えてくれ そう、今の私が欲しているのは「道標」だ 崖っぷちで ただ最果てない青を見ていた私は 幾日かぶりに道のない森を振り返った
いつもの街並み歩いていく 君の足音聞きながら 楽しそうな音が空に響く 何気ない笑顔を見てる 君の手を握りながら 柔らかな感触が僕の手を包む 何気ない日常 失えば手遅れ それを知るよしも無いけど 大切にしたい 今を君を全てを 君の足音が 遠ざからないように 強く強く手を握る 離れなくなるくらい 強く強く手を握る 離れなくなるように